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不妊治療のひとつである体外受精や顕微授精では、培養した受精卵(胚)の状態を評価するために「グレード」という指標が用いられます。ただし、グレードはあくまでも見た目による評価であり、妊娠の可能性を完全に予測できるものではありません。
この記事では、受精卵(胚)のグレードの見方や評価基準、妊娠との関係について分かりやすく解説します。
【この記事の監修医師】
片山 典子
りんどうオンラインクリニック 産婦人科医
片山産婦人科 院長
経歴
2005年に医師免許取得。岡山県内、鳥取県内の総合病院で産婦人科医を歴任し、2021年より片山産婦人科に勤務(現院長)。2023年より、りんどうオンラインクリニックの産婦人科医を務める。
監修医からのコメント
全ての女性がココロもカラダも健やかに過ごすことができ、家族全員、そして地域全体の人々の健康につながるようサポートできればと思っています。今ある症状を改善するだけでなく、日々の生活習慣を見直し、根本から「不妊にならない」「病気にならない」「病気を繰り返さない」カラダづくりを目指す支援をしていきます!
【この記事でわかること】
目次

受精卵のグレードとはどのような概念なのか、押さえておきたい基本を解説しましょう。
受精卵のグレードを知る前に、本記事内で登場する用語の定義をご紹介します。
・受精卵(じゅせいらん):精子と卵子が結ばれた直後の、細胞分裂が始まる前の状態を指します。
・胚(はい):受精卵が細胞分裂を始め、2分割、4分割、8分割と成長したものを指します。
・初期胚(しょきはい):受精後2〜3日目頃までの胚を指します。
・胚盤胞(はいばんほう):受精後5日目頃の、将来胎児になる部分と胎盤になる部分に分かれた状態の胚を指します。
不妊治療専門クリニックでは、顕微鏡で見たときの見た目(形態)によって、初期胚や胚盤胞に「グレード」をつけて評価します。
初期胚の評価は、体外受精・顕微授精で用いられます。培養士が初期胚を顕微鏡で確認し、発育状態や形態を「Veeck(ヴィーク)分類」などの基準に沿って評価します。一般的に、数字が小さいほど見た目の状態が良好と判断されます。ただし、グレードだけで妊娠の可否が決まるわけではありません。
受精卵(胚)のグレード評価は、主に移植する胚の選択や、凍結保存の判断、治療方針を検討する際の参考として行われます。つまり、限られた受精卵(胚)の中から、どの胚を優先的に移植するかを考えるための判断材料になるのです。
また、移植を受ける方へ受精卵(胚)の発育状況を説明する際にも活用されます。

初期胚のグレードは、分裂した細胞の大きさが均等かどうか、フラグメンテーション(細胞の核がないまま分裂した部分)がどの程度見られるなどをもとに評価されます。
評価の主な項目とポイントは以下の通りです。
| 評価項目 | 概要 |
|---|---|
| 分割数 | 発育日数に応じて適切に細胞分裂しているか |
| フラグメンテーション(断片化) | 細胞の破片がどの程度みられるか |
| 細胞の均一性 | 細胞の大きさがそろっているか |
| 発育状態 | 全体として順調に成長しているか |
採卵後から移植までの発育状況は、これらの項目をもとに総合的に評価されます。
分割が順調に進み、細胞の大きさがそろっているほど高評価になりやすく、フラグメンテーションが少ないほど良好と判断されます。
初期胚グレードの例は以下の通りです。
| グレード | 特徴 | 状態 |
|---|---|---|
| G1 | 細胞の大きさが均一で、断片化がほとんどみられない | 良好な状態と評価されることが多い |
| G2 | わずかな断片化や不均一性があるが、比較的良好 | 比較的良好な状態 |
| G3 | 細胞の大きさにばらつきがあり、断片化もやや多い | 発育状態を慎重に確認する必要がある |
| G4 | 細胞の不均一性や断片化が目立つ | 発育状態に課題がみられる場合がある |
※グレードの基準はクリニックによって異なる場合があります。
胚盤胞の評価では、ガードナー分類とよばれる方法が広く用いられています。体外受精や顕微授精における移植胚選択の参考として使われる分類方法です。
初期胚のグレード分類とは異なり、胚盤胞では発育が進むほど数字が大きくなります。
「4AA」「4AB」のように「数字+アルファベット2文字」で表記され、以下の3項目を組み合わせて評価されます。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 数字(1〜6) | 胚盤胞の発育段階 |
| ICM | 内部細胞塊(将来胎児になる部分) |
| TE | 栄養外胚葉(将来胎盤になる部分) |
胚盤胞の発育段階は以下の通りです。
| 段階 | 状態 |
|---|---|
| 1〜2 | 胚盤胞への発育途中の段階 |
| 3 | 胚盤胞が形成された状態 |
| 4 | 胚盤胞が十分に拡張した状態 |
| 5 | 孵化(ハッチング)が始まった状態 |
| 6 | 胚が透明帯から完全に出た状態 |
ICM(内部細胞塊)の評価は以下の通りです。
| 評価 | 特徴 |
|---|---|
| A | 細胞数が多く、密集している |
| B | 細胞数は中程度 |
| C | 細胞数が少ない |
TE(栄養外胚葉)の評価は以下の通りです。
| 評価 | 特徴 |
|---|---|
| A | 細胞数が多く、均一に並んでいる |
| B | 細胞数は中程度 |
| C | 細胞数が少ない |
グレード表記の読み方と意味は以下の通りです。
| グレード | 読み方 | 意味 |
|---|---|---|
| 4AA | よんエーエー | 発育段階4、ICM=A、TE=A |
| 4AB | よんエービー | 発育段階4、ICM=A、TE=B |
| 4BB | よんビービー | 発育段階4、ICM=B、TE=B |
| 3BC | さんビーシー | 発育段階3、ICM=B、TE=C |
※胚盤胞グレードはあくまで形態評価の指標であり、グレードが高いことが妊娠を保証するものではありません。

一般的には、グレードが高い胚ほど妊娠率が高い傾向があります。良好胚の方が着床率を期待しやすいという考え方は、多くの不妊治療の現場で認識されています。
ただし、冒頭でも解説した通り、グレードは見た目をもとにした評価に過ぎず、胚の染色体や子宮環境まで判断できるものではありません。そのため、良好胚を移植しても妊娠に至らない場合があります。

グレードが低い胚でも発育する力を持つ胚は存在しているため、妊娠につながる可能性はあります。
グレードだけで結果を決めつけず、主治医と相談しながら治療方針を検討することが大切です。
ここで、実際に当サロンをご利用いただいた30代後半のご相談者様の例をご紹介します。
不妊治療の一環として、採卵後に4個の胚盤胞を凍結し、最初に最も良いグレードの胚を移植しました。しかし妊娠に至らず、2回目の移植では胎嚢確認まで進んだものの、流産となってしまいました。その後、「これで最後」と覚悟を決めてグレードの低い2個の胚を戻したところ、両方とも着床し二卵性双生児を出産されました。
このように、グレードが低い胚であっても妊娠・出産につながるケースはあります。グレードだけで結果が決まるわけではないため、すぐに諦める必要はありません。

良好胚を子宮に移植しても、着床して妊娠を維持し、出産に至ることが100%保証されるわけではありません。胚の見た目が整っていても、内部の染色体数に異常がある場合、着床しなかったり早期流産につながったりすることがあるためです。
着床には胚の状態だけでなくさまざまな要因が関係します。たとえば、年齢とともに受精卵の染色体異常が増加しやすくなることは自然な現象です。また、着床には子宮内膜の十分な厚さや栄養状態も関わります。子宮筋腫やポリープ、慢性子宮内膜炎などがある場合、着床の妨げになることもあります。
さらに、冷えや血流の悪さ、過度なストレス、睡眠不足などがホルモンバランスに影響し、着床環境を乱す可能性もあります。
グレードは顕微鏡で見た形態評価のため、胚の見た目だけでは判断できない要素もあります。

最後に、受精卵のグレードについて多く寄せられる質問とその回答をご紹介します。
A.胚盤胞の評価において、4BBは良好胚として扱われることが多いグレードです。ただし、妊娠率は年齢や子宮環境、治療歴などによっても変わるため、個別の見通しは主治医に確認しましょう。
A.グレードが低い胚しかできない場合、卵子や精子の状態、ホルモンバランス、培養環境、生活習慣など、複数の要因が関係している可能性があります。
・卵子の質:年齢や生活習慣、栄養状態などが関わります。
・精子の質:精子の運動性や形態が良くない場合、受精後の胚の発育に影響することがあります。
・ホルモンバランス:ホルモンのバランスが崩れていると、卵巣機能や胚の発育に影響する場合があります。
・子宮環境:子宮内膜の状態は着床に関わるため、血流や体調を整えることも大切です。
・ストレスや生活習慣:過度なストレスや不規則な生活は自律神経の機能を乱してホルモンバランスや妊娠力にも大きく影響するため、無理のない範囲で規則正しい生活を心がけましょう。
A.グレードと赤ちゃんの性別に直接の関係はありません。赤ちゃんの性別は受精時の染色体の組み合わせによって決まります。卵子はX染色体を持っており、Y染色体を持つ精子と結合すれば男の子(XY)、X染色体を持つ精子と結合すれば女の子(XX)になります。
A.凍結する際に胚の状態が評価され、グレードがつけられます。凍結後にグレードそのものが大きく変わることは基本的にはありませんが、融解後の発育状況によって、実際に移植する際の胚の状態が変わることはあります。

受精卵(胚)のグレードは、胚の発育状態や見た目を評価するための指標です。良好胚ほど妊娠率が高い傾向はありますが、妊娠を決定するものではありません。
低グレード胚でも妊娠・出産につながる可能性は十分あるため、グレードの結果だけで一喜一憂せず、主治医と相談しながら治療を進めましょう。
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