【医師監修】人工授精と体外受精の違いとは?費用・確率・負担をわかりやすく比較

不妊治療のステップアップを検討する際、「人工授精と体外受精は何が違うの?」「費用や体への負担はどれくらい変わる?」などの疑問や不安を抱く方は少なくありません。
人工授精(AIH)と体外受精(IVF)は、どちらも妊娠を目指すための治療ですが、受精する場所や治療内容、費用、身体への負担などに大きな違いがあります。
現在はどちらも保険適用の対象となっていますが、年齢や治療回数によって条件が異なるため、正しい知識を持って選択することが大切です。
本記事では、人工授精と体外受精の違いをはじめ、費用・妊娠率・負担など気になるポイントを比較表で解説します。さらに、治療のステップアップを検討すべき回数や年齢の目安、事前に準備しておきたいことまで、わかりやすく解説します。

【この記事の監修医師】
片山 典子
りんどうオンラインクリニック 産婦人科医
片山産婦人科 院長

経歴
2005年に医師免許取得。岡山県内、鳥取県内の総合病院で産婦人科医を歴任し、2021年より片山産婦人科に勤務(現院長)。2023年より、りんどうオンラインクリニックの産婦人科医を務める。

監修医からのコメント
全ての女性がココロもカラダも健やかに過ごすことができ、家族全員、そして地域全体の人々の健康につながるようサポートできればと思っています。今ある症状を改善するだけでなく、日々の生活習慣を見直し、根本から「不妊にならない」「病気にならない」「病気を繰り返さない」カラダづくりを目指す支援をしていきます!

【この記事でわかること】

人工授精と体外受精の根本的な違いとは?

人工授精と体外受精はどちらも不妊治療の一種ですが、どのような違いがあるのでしょうか。

人工授精(AIH)とは:体内での受精をサポート

人工授精とは、採取した精子を洗浄・濃縮した後、排卵日に合わせて子宮内へ注入する治療法です。精子が卵子へ到達しやすくなるようサポートする方法であり、受精そのものは体内で自然に行われます。比較的身体への負担が少なく、タイミング法の次のステップとして選択されることが多い治療法です。

体外受精(IVF)とは:体外で受精させて子宮に戻す

体外受精では、排卵誘発剤で複数の卵子を育て、採卵手術で卵子を採取します。その後、体外で精子と受精させ、数日間培養した胚(受精卵)を子宮へ戻します。 人工授精より治療工程は多くなりますが、その分妊娠率も高くなります。また、精子の状態によっては、顕微鏡で一つの精子を卵子へ直接注入する顕微授精(ICSI)が選択される場合もあります。

【比較表】人工授精と体外受精の違い

人工授精と体外受精の違いをもう少し詳しく解説しましょう。

  人工授精(AIH) 体外受精(IVF)
妊娠率 約5〜10%/回 約30〜50%/回
(年齢により異なる)
費用 保険適応時の自己負担額
10,000~15,000円
保険適応時の自己負担額
150,000~200,000円
保険適用 対象
年齢や治療回数に制限なし
対象
40歳未満は通算6回まで(子ども1人につき)
40歳以上43歳未満は通算3回まで
体への負担 処置の痛みはほとんどありません 主に排卵誘発剤の副作用、採卵手術による痛みや合併症、ホルモン補充の不快感があげられます。
毎日の注射や頻繁な通院も必要です。
通院スケジュール ・生理1~5日目 診察と検査
・生理1~5日目 診察と検査
・生理10~12日目 卵胞を確認して排卵日を特定する
・生理12~14日目 人工授精当日
・人工授精の約2週間後 妊娠判定
※上記は28日周期の場合
※人工授精当日に採取した精液を病院へ持参する
①採卵周期(約2週間)
・生理1~3日目 診察と検査、排卵誘発剤開始
・生理8~10日目 数日毎に卵胞を確認して採卵日を決める
・採卵日 仕事は休む
・胚の育ち具合で凍結の確定
②胚移植周期(約2~4週間)
・生理2~5日目 診察、必要であればホルモン補充を開始
・生理12~16日目 子宮内膜の厚さを確認して移植日を決める
・胚移植日 仕事は休む
・胚移植後9~11日後 妊娠判定
治療対象となる不妊原因など 軽度の精子減少、頸管粘液不全、タイミング法で妊娠しなかった場合 卵管閉塞、重度の男性不妊など

※治療費は目安であり、医療機関・薬の種類・通院回数により費用は変動します。
※通院スケジュールは一般的なもので、個々の状態によって変わります。

1.妊娠率(成功率)の違い

人工授精の妊娠率は1回あたり約5〜10%であるのに対し、体外受精では約30〜50%と高くなります。 ただし、妊娠率は年齢の影響を大きく受けます。特に35歳以降は徐々に低下し、40歳を超えるとさらに下がるため、年齢を考慮した治療選択が重要になります。 ※妊娠率は医療機関やご夫婦の状態によって異なります。

2.費用と保険適用の違い

現在は人工授精・体外受精ともに保険適用となっています。ただし、保険には年齢や回数の条件があります。

人工授精:回数や年齢の制限なし(保険適用)
体外受精:治療開始時の女性の年齢が「40歳未満は通算6回まで(子ども1人につき)」「40歳以上43歳未満は通算3回まで」という回数制限がある(保険適用)
 43歳以上は全額自己負担になる(保険適用外)

体外受精では、採卵・培養・胚凍結・胚移植など複数の工程があるため、人工授精より費用が高くなります。
なお、費用負担を軽減するために、

なども確認しておくと安心です。

3.体への負担・スケジュールの違い

人工授精:診察回数も少なく、処置時間は数分程度です。痛みもほとんどなく、日常生活への影響は比較的小さい治療です。 体外受精:排卵誘発剤、毎日の自己注射、頻繁な通院、採卵手術、胚移植など治療工程が増えます。採卵日・胚移植日は仕事を休む方も多く、スケジュール調整も必要になります。

4.対象となる主な不妊原因

人工授精:軽度の精子減少、頸管粘液不全、タイミング法で妊娠しなかった場合など 体外受精:卵管閉塞、重度の男性不妊、人工授精で妊娠しなかった場合、原因不明不妊など

人工授精から体外受精へステップアップする基準・タイミング

人工授精の治療を受けていると、「いつ体外受精へ進むべき?」という疑問を抱く方も少なくありません。治療のステップアップの基準やタイミングについて、一般的な目安をご紹介します。

基準1.人工授精の回数(一般的には5〜6回)

人工授精で妊娠する方の約8割は5〜6回までに妊娠するといわれています。6回を超えると妊娠率は伸びなくなるため、多くのクリニックでは体外受精へのステップアップを提案します。 人工授精は毎月行えるため、約半年が一つの目安になります。「半年やって結果が出なければ次を考える」という流れが一般的です。

基準2.年齢(35歳・40歳の壁)

妊娠率に最も影響するのは女性の年齢です。特に35歳以降は卵子の質が徐々に低下し、40歳を超えるとさらに妊娠率が低下します。そのため、タイミング法や人工授精の回数を重ねず早めにステップアップを検討するケースが少なくありません。

基準3.検査で判明した原因

次のような場合は、医師の判断により人工授精を行わず体外受精からのスタートを提案することがあります。

ステップアップを検討するときに準備しておくこと

治療が長期化すると、精神的にも経済的にも負担が大きくなります。だからこそ、事前の準備が大切です。

パートナーとの話し合い(ゴールと予算の共有)

通院の協力や、費用面の限界(どこまで治療を続けるか)を、事前にパートナーと話し合って決めておくことで、迷いや後悔を減らすことができます。

通院スケジュールと仕事の両立の調整

体外受精は卵胞の発育状況に応じて治療が進められるため、急な通院が求められることも珍しくありません。仕事の調整や職場の制度、休暇についても早めに確認しておくと安心です。

信頼できるクリニックを選ぶ

体外受精は培養技術なども妊娠率に影響します。事前にクリニックの治療実績や評判、培養室の設備、治療方針を調べておくことが大切です。通院回数が多くなるため、通院のしやすさや医師との相性などを含めて検討しましょう。

治療だけでなく「妊娠しやすい体づくり」が同じくらい大切

不妊治療では、医療技術によって精子と卵子が出会う機会を増やすことはできます。しかし、元気な卵子や精子を育み、赤ちゃんを迎えるための体を整えるのは、ご夫婦自身の日々の生活です。
食生活や睡眠、運動、ストレスケアなど生活習慣を見直し、体調を整えながら治療に取り組むことは、妊娠しやすい環境づくりにつながります。治療と体づくりを並行して進めることで、結果として保険適用の範囲内で妊娠に至る可能性が高まるケースもあります。
東洋医学では、一人ひとりの体質や体調に合わせて「冷え」「血流」「胃腸の働き」「自律神経のバランス」などを整える考え方を大切にしています。不妊治療と並行しながら漢方を取り入れ、体調管理に取り組む方も少なくありません。

医師と相談しながら最適な選択を

人工授精と体外受精は、どちらが優れているというものではなく、ご夫婦の年齢や不妊の原因、これまでの治療経過に応じて選択することが大前提となります。
人工授精は身体への負担が少なく、タイミング法の次の段階として行われることが多い一方、体外受精は治療の負担や費用は大きくなるものの、妊娠率が高く、より多くの不妊原因に対応できます。

治療法を選ぶ際には医師と十分に相談しながら、ご夫婦にとって無理のない治療計画を立てることが大切です。また、治療だけに頼るのではなく、生活習慣や体質を整えることも妊娠を目指すうえで欠かせない要素です。

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